「コーチングとマネジメント」平尾誠二さんの講演 〜その2〜

mitchell_desu2007-04-02



ラグビー日本代表の元・監督、平尾誠二さんの講演を聞く機会がありました☆
備忘録として、自分用に手帳のメモと記憶から再現したいと思います。

具体的な講演の内容は、長くなるので、何回かに分けてエントリーします。
今回は、その2回目。「コーチング」です。

■ガイジン監督の快進撃

特にプロ野球やJリーグで顕著ですが、最近は、ガイジン監督の成功が目立ちます。
具体的には、日本ハム ファイターズのヒルマン監督。千葉ロッテのバレンタイン監督。パ・リーグは2年連続で、ガイジン監督がリーグを制したことになります。また、サッカー日本代表の監督はオシムさん。彼も、就任当時は、弱小球団だったジェフユナイテッド市原を、優勝争いできる強豪に育て上げ、その手腕を買われての抜擢だったと思います。

私(平尾さん)も現役当時、多くのガイジン監督やコーチに師事してきましたが、彼らに共通する点は、大きく2つ。

  1. 失敗しても、OK!
  2. チャレンジしないことには厳しい

とにかく選手に積極性を求める指導法で、のせるのがうまい。誰とは言いませんが、とかく日本の監督にありがちな「グチ・ボヤキ」は、今の時代、流行りません。選手をポジティブに盛り上げていくこと。そんなコーチングが、今は結果を出しています。

コーチングとは?

コーチングとは、選手のモチベーションを高める手法です。その方法は変わっても、コーチングの目的は、ひとつです。

  • キライなこと、イヤなことを、積極的な意識で取り組ませることが大切!
  • イヤイヤで強制的にやらせても、それはムリ!

「いかに選手のモチベーションを高めるか?」それが、コーチングです。

■「泣き虫先生」の指導法とは?

しかし、目的はひとつなんですが、今と昔では、その手法が大きく異なりました。
私(平尾さん)の高校時代、京都の伏見工業という学校で、「泣き虫先生」で有名な山口先生ラグビーを教わりました。

伏見工業というのは、ドラマ「スクール・ウォーズ」の題材になった学校で、とにかく当時は、札付きのワルが集まる学校でした。ケンカするか、ラグビーするか、そんなヤツしか来ない学校でした(笑)。また、山口先生も、プロジェクトXなんかで脚光を浴びましたが、人情味溢れる、非常に良い先生でした。この山口先生ですが、先生の手法は、ただひとつ。鉄拳制裁です。
まず、この山口先生、生徒をシバく、シバく(笑)。口より先に、手が出てくる。私も、さんざん、顔のカタチ変わるぐらいドツかれました。

■参考w: 涙に濡れたゲンコツ

http://www.youtube.com/watch?v=zdLhGd36fkU

ラグビーやってるヤツなんて、みんなタックル好きなんだろ」って、みなさん思うじゃないですか。あれウソですよ。タックルなんて、みんな嫌いなんです。だって痛いんですもん。
考えてみて下さいよ。相手は毎日鍛えてる体のでかいヤツですよ。それが、目玉ひんむいて、「絶対取られまい」と必死こいて走ってくるワケじゃないですか。そりゃ恐ろしいですよ。でね、そこにガバーっ行くじゃないですか、これがまた、めちゃめちゃ痛いワケなんですよ。試合ならまだしも、毎日の練習で痛い思いすんの分かって行くのって、やっぱりイヤなんですよ。
で、案の定、ちょっと手を抜くヤツが出るワケですわ。それ見つけたら、山口先生、四の五の言わず、まずガツーン。でね、「もう、お前やめろ!もう明日から練習こんでエエから」となるワケです。

■昔の指導法は、「突き放し型」

ガツーンしばいて、「もう来るな!」これが、いわゆる「突き放し型」という手法です。
「もう来るな!」言われても、学校なんて、ラグビーかケンカしかすることないヤツばっかりですから、練習来れなかったら、あとケンカしか無いワケですよ。まだラグビーの方がいい(笑)。で、手抜きが必死で言うワケです。「すいませんでした。もう一回やらせて下さい!」。でも、「そうか」とならないワケです。「もう、お前はいい。帰れ!」です。
「もういいかな?」手抜きは、何回も先生のとこに謝りに行きます。すると今度は、「だったら、グランドの端で見とけ」と。これがいわゆる放置プレーです(笑)。

見てると、仲間はタックルの練習を終えて、今度は楽しいパスの練習を始めます。それをジーと見てるワケです。やっぱり手抜きもラグビー好きでやってるワケですから、そりゃ悔しい。自分もやりたい。ムズムズしてくる。それで、しばらくすると先生にもう一回、謝りに行きます。それでも、「もう、お前はいい」。そんな定例行事が何回か繰り返された後、いよいよ来るワケです。

■「もういっぺんだけ、やってみろ!」

何回目かの謝罪の後、いよいよ先生が静かな声で言い放ちます。
「もういっぺんだけ、やってみろ。相手はアイツだ」その指の先には、チーム1の巨漢が。「ただし、今度ダメだったら、お前ほんとにラグビーやめろ」。

ここからが修羅場です。手抜きは足は速くても小兵。相手は、チーム1の巨漢。青ざめた顔でスパイクのヒモを結びます。「これが人生で最後のタックルになるかもしれない」考えると、ヒザが震えてきます。様子を見てたチーム全員が集まって、声を掛けます。
「絶対に頑張れ!」
「負けるな!」
「お前ならできる!」
・・・手抜きの顔色は、いっこうに戻らない。


「一本だけだぞ」
先生の声を合図に、巨漢がボールを持って立ちます。手抜きも、ポジションに立つ。「やるしかない」腹の据わった手抜きの顔色は、もう人殺しの形相に変わってます。
ダーッ、必死の形相で走る巨漢。
それを仕留めに行く手抜き。
バシーッ!!!


おおおおおぉぉぉ!!!
仲間の声。


その場で、バタリと倒れる巨漢。


巨漢も形相は必死ですけど、そりゃやっぱり空気は読めるヤツなんです(爆笑)。
そりゃ〜昨日まで、同じ釜のメシ食ってきたやつですから、そこはさすがに空気を読めと(笑)。先生も、そこは、そういう人選するワケです。
空気を読んでる巨漢と、人生最高のタックルをきめる人殺しの形相。そりゃ〜、倒れんもんも倒れますわ。


やったっ〜!!!
仲間の声。



で、今まで練習で一度も倒したことない巨漢を倒した手抜きは、まだ眉間に皺寄せたまま倒れてる。そこに、すかさず近寄る先生。
「やれば、できるじゃないか」
グランドに倒れた彼に手を貸して起こしてやると、パッパッと砂を払ってやったりする。バックには夕日がきらめいていたりする。これは泣きますよ。もう顔ぼろぼろにして号泣です。


「よし!練習に戻れ」
顔ぼろぼろにしたまま、仲間のランニングの輪に加わる彼を、仲間が入れ替わり讃えたりする。
「やったじゃないか!」
「ゴツいタックルあるやんか」(ちょっと関西弁も交えつつw)
歓声と嗚咽を交えながら、グランドを走る伏見工ラグビー部のメンバーたち。


これで、チーム全員のモチベーションがグーンと上がるワケです。練習にも気合が入ります。手抜きタックルしてたヤツが、その日からエゲつないタックルに変わったりします。チームの結束力も高まって、そりゃ日本一になるぐらいチームに力がつきます。これはこれで、当時はイケてる手法だったワケです。しかし、今ではこの方法は通用しません
(長くなったので、また続きは日を改めます)

※ご注意:当日のメモと記憶で再現してます。ほぼ完全に自分の表現になってます。同じ内容だとは誤解しないで下さい。