夏休みの絵日記で考えてみた

mitchell_desu2008-01-14


以下の二つは、対立しているようでいてターゲットが違う話であるように私には思える。

現状を変える一発逆転があると思うかもしれないけど、どうやら近道はないみたいです。
毎日少しずつ、少しずつ努力を積み重ねるしかない。まったく人生ってやつは。まったく。

むしろ、「近道を探す努力」こそが正しい努力であって、 「近道や一発逆転を狙わないで地道な努力を積み重ねる」という姿勢が、 自分と周囲を不幸にし、 格差と貧困を生み出し、日本を衰退させてきた。

ターゲットが違うってどういうこと?抽象的な話は苦手なので、具体的な例え話で考えてみる。

■両氏のアドバイスとは、誰に対するどんなアドバイスだったのか?

guri_2氏、fromdusktildawn氏、両氏アドバイスを、夏休みに絵日記の宿題を出された子供に対する、父親からのアドバイスとして考えてみる。

○guri_2氏 「地道な努力の積み重ね」アドバイスとは、「計画性ある、実行が伴わない」子供へ、「やってみなはれ」というアドバイス

具体的には、こんな感じ。

• 今日の努力が実を結ぶのは、だいたい夏休みの最終日。のんびり行くしかないですよ。
• ちょっとだけやる。「ちょっと」が超大事。
• 遅れた分取り戻そうと思って、いきなり5ページから書こうとするから辛くなる。初日は机に座ってノート広げたところで終了。
• だけど、やろうと思ったらその日のうちにやる。絶対やる。1歩踏み出すだけでいい。
• 今日行動を起こさないと、仕上がるのが1日遅れるよ。
• あんまり遅れると、そのうち夏休みが終わるよ。

と言ってるわけだし、

○fromdusktildawn氏 「一発逆転狙いの近道探し」アドバイスとは、「実行する、しかし計画性がない」子供へ、「近道あんじゃね?」というアドバイス

具体的には、こんな感じ。

めちゃイケ小学生は、
「その宿題の評価基準は、コンテンツの充実でも毎日書くことでもなく、
単に、その宿題が、9月1日に絵日記の体をなして先生に提出されていることだ」
ということを見抜く。


そこで、めちゃイケ小学生は、まず、その絵日記の構成要件である毎日の天気と温度を
入手すべく気象庁のお天気サイトを探し出した。毎日、自分が記入するのではなく、
先生が求める情報の入手方法を他に求めたわけである。


次に、日記のテキストデータを、同じ小学生のブログから引用する方法に変更した。
さらに、日記の内容とシナジーを引き起こす絵についても省力化することを検討し、
特徴的なトピックに絞り込んで、双葉なら双葉の葉っぱを1点どアップで、それも輪郭だけを描くことで絵の量産体勢を確立した。


これにより、その絵日記は、
両親のフォローや友だちへのヒヤリングの工数をほとんど投入せずに、
生産性を飛躍的に伸ばし、その絵日記作成は半日仕事に大化けした。
めちゃイケ小学生自身も、両親も、先生も、みんなが幸せになった。


実際、こんな話はそこら中にあり、
少しも珍しい話じゃない。

と言ってるわけである。

■マトリクスにしてみた

で、この2つのアドバイスをマトリクスにしてみた。

これを見ても、2人は別々のターゲットに対して、異なる働きかけをしているということがよく分かる。有り体に言えば、guri_2氏は、「計画立てただけじゃなくて手動かせよ」と言ってるわけで、fromdusktildawn氏は、「いきなり書き始めんなよ。頭使えってよ」と言ってるわけだ。これらはなんら対立する話じゃない。アドバイスのターゲットが違うということ。だから働きかけ方が違うという話。

どちらも有用なアドバイスには変わりないので、受け手としては自分はどちらの立場なのかを見極めて、しかるべきアドバイスを頂戴するというが正しい用法なんだと思う。

■私自身へのアドバイスとして落としこんでみる

と、これで終わるとあまりにウマシカっぽいので、両者のアドバイスを私自身へのアドバイスとして備忘録を残したい。

○guri_2氏 「地道な努力の積み重ね」アドバイスは、
正月休みを期に年間計画をたてた多くの人へのアドバイスとして受け止めたい。07年正月休み。私は1年52週分の詳細なスケジュールを立てた。しかし結果はヘコヘコに終わった…。今年は、「行動する男、ミッチェル2.0」として「地道な努力の積み重ね」のアドバイスを頂戴します。

○fromdusktildawn氏 「一発逆転狙いの近道探し」アドバイスは、
世界的にも生産性が低いといわれる日本のホワイトカラーへのアドバイスとして受け止めたい。「書評:失敗の本質―日本軍の組織論的研究 〜 日本の管理職は世界で何位?」でも書いたんだけど、日本のホワイトカラーの生産性は実に厳しいものがある。

スイスIMDの調査によると、調査対象30ヵ国の中で日本の研究開発支出のGDPに占める割合は1位、特許数も1位であるなど科学インフラ分野の水準は30ヵ国中2位と強さが鮮明に。しかし一方で、企業家精神の普及度は30位、マーケティングは23位などマネジメント分野の水準は20位。「科学インフラ分野の水準は高く、マネジメント分野の水準は極めて低い」という姿が浮き彫りに。*1
・・・極端に要約すれば、現場力は世界有数のレベルにあるものの、マネジメントは極めて低レベル。


昭和14年、18000人もの兵士を失ったノモンハン事件。日本軍を圧倒したソ連軍司令官ジューコフスターリンの問いに対して、日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である、と評価した。


はたして我々は歴史から学んでいるか?
例え反面教師とは言え、なんらかの教訓は導き出されたのか?
18000人の命を無駄にしないためにも、我々にできることは無いのか?


戦時中の軍隊組織にも現代の企業にも通じる「現場↑、管理職↓」という図式が、仮に日本人の特性によるものであれば、なおさらこの図式を意識してここに陥らないような具体的な策が必要となる。
では、どんなものが考えられるだろうか?
(後略)

右から来た書類にハンコ捺して左に流すような作業でも、ついつい仕事だと考えてしまうことってあると思う。私もスーツ(笑)の端くれとして、引き継ぎ書に書いてあることを地道にコツコツやってるだけじゃなく、積極的にイノベーションを仕掛けて行くぞ!と、そう思いました。

*1:スイスIMD : International institute for Management Development 欧州の代表的なビジネススクール